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渡邊世紀監督インタビューINTERVIEWSOct.01,2015

テクノロジーの進化と共に

テクノロジーの進化により、映像制作方法はどのように変わると思いますか?

テクノロジーの進化で、人は少なくても、制作期間が短くても、作品を作れる環境になってきています。 フィルム時代のように個人が莫大な予算をかけなくても作品を作れる時代になったのです。自主製作をやってきた人間なので、その有り難みは身に沁みています。

と同時に、大きな懸念があります。低予算の作品に限る話だと思いますが、「暗くても明るく映るカメラができたから照明スタッフさんは要らない」、などと考える人たちが出て来たことです。

自主製作は個人の自由なのでいいとしても、商業作品において、予算を切り詰めるためにそのような考えを持つ人がいるということです。
実際にそのような理由で仕事から外された照明さんを僕は知っています。明るくする為に照明スタッフさんがいると思っている人が「映画」と呼ばれるものを作っている現実は、もちろんテクノロジーの進化のせいではありません。

しかし、「映画」っぽいものを簡単に作れるようになったことで、映像や映画製作に対して安易な考えを持つ人が増えたのは事実だと思います。

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そもそも監督の考える映画表現とは?

僕は自分の長編作品で一人の女優にすべての役を演じてもらったり、人形と人形師だけでドラマを構築したり、かなり変な映画を作ったりしていますが(笑)、それは自由な発想で表現していきたいといつも思っているからです。

しかし、それができるのは、「映画を映画たらしめているもの」を守った上でのことです。

演技、演出のみならず、構図、レンズ、照明、美術、サウンドデザイン、メイク・・・
映画のすべての要素がひとつの作品のためにそれぞれの表現をしている、それが映画だと思います。
その必要性を感じないようであれば、それは映画表現の崩壊です。

フィルムからデジタルへの転換期には「フィルムでなければ映画ではない」という考えの方もたくさんいらっしゃいましたが、上に挙げた「照明要らない」問題はそれより遥かに映画表現にとって重大な問題だと思います。

もちろん時代はどんどん変化して新しい価値観が生まれたりするわけですが、どんなにテクノロジーが進化しても、映画は人間が作るものであるという本質的なところは見失いたくないと思っています。

誰でも簡単に映像を撮れる時代だからこそ、プロはよりプロとしての映像を撮らなくてはいけないと思うので、テクノロジーの恩恵は非常に大きいですが、映像表現をする中で、テクノロジーでは賄いきれない事を如何に見極めて手法の選択をするか?というプロの映像作家や映画監督の考え方が一層重要になってきていると思います。

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